導入事例
溶接は楽しい、面白い!
研究者と技能者、人と機械、日本と海外…無限の可能性に期待/大阪大学 接合科学研究所
溶接は楽しい、面白い!
研究者と技能者、人と機械、日本と海外…無限の可能性に期待
-溶接伝承マスター® をどこでお知りになりましたか?
山本光学には接合科学研究所創立50周年の記念事業に賛同いただいており、そのお礼に伺った際に、スマートグラスVersatileを活用した『溶接伝承マスター』をご紹介いただきました。
正直なところ、山本光学さんから紹介を受けるまで『溶接伝承マスター』のことは全く知りませんでした(笑)。
近未来的なスマートグラスというデバイスを使って、溶接の感覚が見える化できる点がとても面白いと感じ、早速デモの依頼をしました。
-溶接伝承マスター® の導入の目的や活用方法についてお聞かせください。
溶接を行う際の目や耳、匂いや音、指先で感じ「溶接技術とは何か」を体感することはとても意義のあることです。しかし、研究者や学生が実際に溶接して日常的にモノづくりを行っているわけではありません。実際、私たちが溶接を行ったり、技術を体得したりする機会はそんなに多くなく、溶接の経験がほとんどない学生も少なくありませんでした。
『溶接伝承マスター』を拝見した際、これを使えば、若い学生に『溶接』に触れてもらう良いきっかけになるのではないか、『溶接伝承マスター』を使って短期間で溶接技術を体得することは、学生や研究者自身の業務にプラスになると感じ、すぐに導入を決めました。ほかの溶接技能教育ツールと比べても、低価格でコストパフォーマンスが良いと感じたのも導入を決めた理由の一つです。
-溶接伝承マスター® を導入した感想をお聞かせください
『溶接伝承マスター』は、スマートグラスにしかできないシンプルで明確な機能、コンセプトがいいところですよね。溶接に触れてもらえる・溶接を魅力に感じてもらえるきっかけとして、母材とトーチの適切な距離をデジタルな数値やグラフィカルな動きで見える化できるので、とても良いツールだと思います。技能の初心者自身が、なぜうまく溶接ができないのかが理解できるため、習得の速さにもつながることは間違いありません。
実際のところ、私自身も短時間で上手くなりましたから(笑)。
現在は学生が主に使用していますが、『溶接伝承マスター』を使用すると溶接技能の上達が早いです。表示された二本のバーの間にボールが入るよう、スマートグラスのディスプレイに透過された情報を見ながら溶接するだけなので、面白く、楽しみながらゲーム感覚でトレーニングできるようです。学生自らが進んで溶接する機会が増えているように感じています。学生が自分自身の目や耳、音や感覚で溶接とは何かを感じて知ることは、若い学生にとって非常にいい体験になっています。
-今後、溶接伝承マスター® をどのように活用していきたいと思っていますか?
溶接業界全般に言えることですが、溶接技能者の高齢化、若手のモノづくり離れ、増加する外国人技能実習生への言語や文化の違いによる指導の障壁、などにより溶接離れが顕著化してきています。
その理由の一つに、溶接の難しさや、指導・教育方法があるのは間違いありません。腕加減という感覚に頼っている部分を指導するのは難しく、溶接技能者は、いま機械はどういう状況にあるのか、溶けている金属の状態を目で見て、音で感じるなど、感覚に頼っていることがほとんどだと思います。
接合科学研究所では、2023年1月にASEAN地域での溶接に関する研究と技術開発・人材育成強化を目的に、ベトナムのハノイ工科大学に「接合科学研究所HUST-OU」を設立しました。東南アジアを中心に優秀な人材がたくさんいます。この拠点を通じて、優秀なベトナムの学生と日本の学生同士の交流、研究や人財の好循環を生み出していく予定です。そして、今後はこのスキームをタイやマレーシアとも展開していきたいと思っています。そのためにも、母国語に関係なく直感的に誰でも操作できる「溶接伝承マスター」のようなスマートグラスやVRを使った新しい技能教育にも力を入れていきたいと思っています。
最後に、今までの溶接業界は、研究者は研究を、技術者は溶接技術を、また、人と機械の役割も明確に線引きされていましたが、今後はその垣根を越え、教導・共有して働く、機械と人が協働する、といったさまざまなコラボが実現してくるのではと考えています。少し大げさかもしれませんが、スマートグラスVersatileを使った『溶接伝承マスター』は「人と機械の協働」という溶接の『現場が変わる』ターニングポイントになるかもしれませんね。